或る物語-1-

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 京都の北西というと北野天満宮があり、金閣寺があるあたり一帯を西陣といっています。西陣という名称の由来は、応仁の乱で西と東にわかれて戦い、西軍の陣地が置かれたことに由来しています。船岡山にその陣があり、東の陣は上御霊神社にあったらしい。上御霊神社へ赴くと、応仁の乱勃発の地との石碑があるから、そのようです。なにやらあやふやにいうのは、現実に見ていないからです。現実に見ていないけれど、ここに書くというのは、これはフィクション、作り物語なのです。男と女が登場する物語ですが、これは昭和の中頃の出来事です。昭和は63年までありましたが、中頃というと昭和31年前後のことです。西暦いえば1956年あたりということになります。この年に何があったかというと売春防止法が制定されているんです。その頃の男と女の出来事を、書いてみようと思うのです。

 その子の名はタエ子といいます。中学三年生になっていました。そのタエ子に好きな男子ができたというのです。タエ子は、そのことを誰にも打ち明けられずにいました。同級生の男子で、おとなしいけれど勉強はそこそこできてクラスでは上位いるという話を、タエ子は聞いたのです。タエ子は三人姉妹の真ん中で、勉強はあまるできなくて、中学を卒業したら就職する手配になっていました。そんなタエ子が、初恋です。好きになった男子と話をしたい、友だちになりたい、お付き合いをしたい、と思うようになったのです。学校の帰り道が同じ方角なので、自分を知ってもらうための方策を考えます。手紙を書いて渡す。これはラブレターですから、文章を書かないといけません。でもタエ子には、それだけの文章力が、ないように思われ、少女雑誌のなかから恋文という文章があったので、それをまねて書くことにしたのです。

 「わたしはタエ子ともうします。キミのことが好きです。お友だちになっていただけませんか。」これだけの文面ですが、ノートを一枚ちぎって、鉛筆で書いて、四つ折りにして、好きな男子のカバンに入れてしまうという行為に至ったのでした。カバンに手紙を挟んでからというもの、ドキドキしながら武夫の様子を見ます。武夫の反応は何もなく、タエ子はとっても不安な気持ちになってきます。さて、その紙切れを発見した武夫は、タエ子という女子を知らないわけではなくて、なにかしら見られているという意識を抱き始めたとことでした。好きとか嫌いとか、そういう感情はなくて、でも女子への憧れは、並みの男子だから、ありました。女子への興味は、好き嫌いというより、からだのことです。男と違う女のからだ、その違うことへの興味です。


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