愛の物語-15-

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 京子は、ひとつ年下の誠二に恋したようで、外気は寒いのに、気持ちはふわふわです。中学の時に恋した男子がいたけれど、それは片思いに終わりました。京都へ出てきた16才には、直人という名の年上の男に言い寄られ、神社の木陰で抱かれ、草叢に寝かされ、処女を失った経験があります。でも、これは一回限りで恋にはならず、労働者だった直人は京子の前から姿を消してしまって終わりました。その京子が、茂子に気持ちを打ち明けたところです。
「京子、誠二って夜間高校通ってるんだから、努力家なんよね、いい子じゃない」
茂子は、専務の啓介と一緒にいて、からだを求められるままに渡しているから、その分、女として大人っぽいところがあります。その茂子が、京子から誠二と喫茶店で会ったことを話したから、茂子からは羨望の目で見られたのです。京子には、茂子が専務啓介と深い関係にあるとは知らないから、優越の気持ちを抱きます。
「なかなか、会う間がないのよ、誠二くんと、逢引したいけど」
逢引というのは、男と女が惹かれあって逢うということだから、京子がこの言葉の意味するところを、どれだけわかっているのかはわかりません。男とのことは、京子には、一回だけの経験ですが、未経験ではないし、小学校や中学校で女のからだについて話を聞いているから、そのことはわかっています。でも、いま、誠二をそういうふうには求めていません。
「だめよ、京子、誠二くん、好きになってもいいけど、やっちゃだめよ」
「そうだよね、やっちゃ、だめだよね、でも、まだ、そんなとこまでいってない」
「男は、心で、なにを思ってるのか、わかるでしょ」
「わかんないよ、そんなこと、わかるわけないよ」
「じゃ教えてあげる、男はみんな狼よ、っていうじゃない、やりたいのよ、みんな」
「やりたいって、そんなふうには見えないけど、誠二くん」
茂子の部屋には鏡台があります。鏡の前には着物生地つくった紅い前隠しが下ろされていて鏡は見えないけれど、その艶めかしい前隠しの色が、女ごころを大人にします。京子の部屋には手鏡があるだけで、姿を見る鏡がありません。シュミーズやブラジャーなどの下着、ズロースやショーツも、茂子は、何種類も持っていて、柳行李に並べて詰めているのです。京子は、茂子の下着が詰まった柳行李のなかを見せてもらって、女の嫉妬する気持ちがふつふつとわいてきます。
「ねえ、京子、京子も、お化粧して、服も買って、おしゃれしないとだめよ、ねぇ」
「わたし、わかれへんわ、なにが似合うのか、わからへん」
「白いシュミーズ、白いズロース、京子のは、地味すぎるよ」
茂子は、白い色の下着も、少しだけ色に濃淡がある種類で揃えて持っています。もちろん、専務の啓介から貰うお金で買い揃えているからです。

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