愛の物語-16-

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 茂子が教えてくれたランジェリーのお店へいくと、透けたネグリジェや透けたショーツなどがありました。お給料をもらって、それらを買い求めるにはちょっと高めなので、買うのをためらったけれど、黄色いショーツとブラジャーのセットを買い求めました。その専門店は千本西陣京極の映画館の隣のお店で、ショーウインドウは明るい洋服のマネキンが置かれています。間口一坪奥行二坪ほどの洋装店で、おそるおそるの気持ちで、京子が入っていくと、若い女の人が、迎えいれてくれます。
「いらっしやい、初めての子ね、ゆっくり、見てみたら、いいよ」
まだ若い女の人は、少し派手目のセーターにズボン姿、髪の毛はパーマネントを当てていて、流行りの格好をしています。なにかしら男の人のようにみえたけど、女の人には違いないので、京子は、目を見張ります。
「お勤めの子ね、織屋さんの子ね、どこで仕事してるの」
「はい、泉織物にいるんですけど、わたし」
「そうなの、泉の子なの、可愛いわね、いくつ?」
「18です」
明るいお店の中は、ランジェリー、下着の類が豊富に揃っていて、京子は、ナマに目の前でそれらを見るのが初めてだったから、目を輝かせて驚きを隠せません。
「わたし、ユミってゆうの、あなたの名前は?」
「キョウコ、京都の京に子供の子、西上京子」
「そう、京子ちゃん、男の子、いるんでしょ?」
「そんなぁ、まあ、わかんない、わたし」
「女の子が、ね、興味を持ちだすのは、男のせいよ」
「はぁああ、わたし、好きな人、いるんです」
京子は、もぞもぞ恥じらいながら、誠二の顔姿を思い描きながら、ユミに告げたのです。
「最初はね、これくらいがいいかなぁ、京子ちゃんには、これくらいかなぁ」
透けてはいないけれど、ゆるくてふわふわな感じ、ピンクのブラジャーとショーツのセット。それの白いシュミーズを合わせて、透明ガラスのショーケースのうえに並べ、京子に勧めてくるのでした。
「こんなの着てたら、男の子、喜ぶんよ、たいがい、ね」
「そうですか、わたし、男の人のことわかんないですけど、喜ぶんですかぁ」
「わたしのお店、男性が喜ぶ品物ばかりを、揃えているのよ」
女が男を喜ばせる、という表現をユミの言葉で聴かされた京子は、これまで封印されていた気落ちを揺さぶられてしまいます。京子は、店長のユミに勧められるまま、下着セットを買い求めたのです。支払いは、お給料が出てからでいいと言われ、ツケ買いしたのです。

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