愛の物語-17-

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 水曜日は朝から気持ちが落ち着かない京子です。織機のまえに立って、織物に異常がないかを見守るのが織子の役目です。ガチャガチャの金属音に会話もできないほどの騒音の中、誠二の顔を思い浮かべるのです。今夜は、裕二と喫茶店で待ち合わせている日です。はっきりした約束をしたわけではないけれど、水曜日は学校の授業が早く終わるから、会える。会えるといっても夜の八時です。そわそわの京子は、六時までの仕事を終え、食事をして、七時半には寮になっているアパートの自室から出る計画です。このまえに買った下着を身につけ、スカートとセーターを着て、コートを羽織った京子です。千本から仁和寺街道を西にまっすぐ、西大路まで出て北へあがると、まもなく白梅町です。道路から喫茶ホワイトのなかを見ると、明るいです。二階があり、京子は、二階へあがります。窓辺のテーブルに椅子が四つ。四人がワンテーブルです。
「なににしますか」
ウエイトレスが水を入れたコップをテーブルに置きながら、注文をききます。
「あたたかいミルク、おねがいします」
「ホットミルクですね」
前にもいたウエイトレスで、京子と同い年くらいです。黒っぽい上着とスカートに白いエプロンをしたウエイトレスは、京子がよく見ると、お化粧をしています。この前には気にならなかったことですが、西陣京極の洋装店でユミさんと話しをして以来、女の身だしなみについて、気になるようになったのです。八時を少し過ぎた時間に、誠二が店の前に単車を止めるのが見えて、見下ろしている京子のソワソワの気持ちがいっそう高くなって、心臓がドキドキするのがわかります。階段を上がってきた誠二の姿を認めて、京子は、顔を赤らめます。誠二は、あいかわらず皮のジャンバーを着ていて、エンジ色のマフラーをしています。
「こんばんは」
誠二は、ニコッと笑い顔をつくって、京子にあいさつをして、椅子に座ります。テーブルを介して京子の前です。ウエイトレスの子が注文を取りに来て、誠二はホットコーヒーをブラックで飲むからと言って、注文します。ウエイトレスは、京子の顔を見、それから誠二の顔を見て、クスっと笑う仕草をして、階段を降りていったのです。

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