雑記190331

_20190331_134711.JPG
ブログのタイトルを改めました。
新しい時代の幕開けに<物語、雑記、寫眞>としました。
どうなることやら、今日は年度末、3月31日です。
平成に替わる新しい元号が明日4月1日発表されます。
ぼくは西暦を使うことが多いから、それほどのことではない。
そう思うところですが、関心ごとではあります。
小説家をめざして挫折、写真家をめざして挫折、という輩です。
まだ少しは生きていくから、よろしく頼む。

京都のはなし-2-

_20190314_143222.JPG
-2-
千本上立売のすぐ東北に釘抜地蔵尊(石像寺)があります。子供のころから知っている、癒されるスポットです。弘法大師、空海さんがここを訪れて始まった信仰の場なのか、そのようなことが書いてあったけど、境内に太子堂という祠があります。古いお寺です。釘抜地蔵尊とは、釘抜の形をした、釘抜は人の形、病んだところをさすって、自分の体の病んだところをさする。こうすることで自分の体が治癒するというのです。神頼み、藁にもすがる、困ったときの神さま、仏さま、とお祈りして、心を鎮めます。千本上立売というと、平安京のど真ん中の通りで、内裏の北にあたります。ここ、まっすぐ、道なりに、蓮台野と呼ばれる区域になります。今の千本北大路あたりから北、死者を弔う場所だった、と聞いております。
(続く)

京都のはなし-1-

_20190314_145713.JPG
-1-
 京都のはなし、といえば北野天満宮から入ろうか、それとも釘抜地蔵や千本えんま堂界隈から入ろうか、迷いながら、ここ北野天満宮の門をくぐることにしました。どうして冒頭が北野天満宮や釘抜地蔵やえんま堂になるのかといえば、ぼくの生まれ育った場所が、その場所に近い場所だし、いまもって、その地にいるという地場そのものだからです。生まれ育って現在もその場所にいるという、自分では奇妙にさえ思える関係に、はたして俯瞰して物語が描けるのだろうかと思うところです。でも、現代の創作原点は、意識と記憶と現場、ここに求められると思うのです。<京都のはなし>は、事実に基づきたいと思っていますが、登場人物は仮名で、半分フィクションにしていけばいいのかな、とも思うところです。自伝的なところもあるし、京都学的なところもあるし、読み物として描いていければいいかと思うところです。
 平安京が造営される都、京都と呼ばれる区域の北西になる郊外に位置しているのが北野天満宮なんですね。ぼくは、文献なんぞはほぼ紐解かなくて読まなくて、巷の光景と由緒が書かれた札を読む、それだけの知識の記憶で、フィクションしていこうと思っています。北野天満宮を南から参拝する、東から参拝する、もちろん北からの参拝もあるわけですが、ぼくの参拝の仕方は北からの参拝です。裏からといったイメージで、南や東から参拝すると、一番奥になるところから始まることになります。北門から入ると、文子天満宮があります。文子と書いてあやこと読むのですが、この文子さんに、あるとき菅原道真を祀るようにとのお告げがあって、祠をつくって祀った場所が下京にありますが、ここ北野の地にもあります。北野社と言っていた。明治以前の神仏習合の時代には、仏さんもおられたようですが、今は神殿があり、神さまだけ、神さまといっても菅原道真が祀られているのです。ぼくには、ようわからん、生きた人間が神として祀られるということの意味がよくわからないんです。船岡山に建勳神社があり、ここは織田信長が祀られているんですが、これは明治になって造営された神社で、ようわからん、です。

愛の物語-42-

-42-
 茂子は、人恋しくて、京子に会いに化粧品店すえひろを訪ねます。先に泉織物を辞めた京子が、すえひろで店員をしていると聞いて、会いに行くのです。茂子はもう織物会社勤めはしていなくて、卯水旅館の中居です。中居とはいっても夜の世話係だから、昼間は時間がとれます。西陣京極の細い道の中ほどにすえひろの店があります。茂子は、このすえひろで化粧品を買い、隣の洋装店ユミで下着類を買っているから、店の中の様子はよくわかっています。
「なんや、茂子やん、会いに来てくれたんね、わたしも会いたかった」
「京子が高校生になったって、えらい評判やったよ、それに比べたら、わたしは、ね」
「茂子かって、専務さんと別れたんやろ、それで会社辞めたんやろ」
「まあ、そういうことやけど、なんかしらつまらないわ」
「そうなん、わたし、今日は水曜で学校ないし、カドヤでごはん食べよか」
「洋食ランチ、久しぶりやわ、食べよ、もう終るんやろ」
「水曜日やから、最後までいて、七時よ、あと一時間」
「ほんなら、ここにいて、ええやろか」
「いいよ、茂子、常連客なんやから、君子さんとも、会ったらいいやん」
明るい雑貨と化粧品のお店は、煌びやかです。19歳になる茂子も京子も、丹後の田舎から京都に、憧れもあって、織物会社に、織子として就職してきて三年。退職して、京子はバイトとモデル業、茂子は旅館の中居と接客業、女だからこそできる仕事に就いたのでした。
「うわ、ランチ、美味しいランチ、エビフライ、ハンバーグ、ハム」
「美味しいエビフライとハンバーグとハム、わたし、好き、丼より好きよ」
「誠二って子、一緒なんやろ、京子」
「一緒って、学校が、やけど、学年違うし、なかなか会われへんのよ」
京子は、日曜の昼に、誠二のアパートへ行ってご飯をつくって、一緒に食べていることは、話題にしません。
「そうなん、誠二って、高校三年生なんやろ、寿司屋、辞めたんやろ」
「自動車の整備士になるんやと言って、モータースで見習いしてるわよ」
「それで、京子は、誠二が、好きなんやろ、関係したん?」
「なによ、茂子、それは、まあ、まだ、してないわ、ほんとよ」
「男は、わたしは、お金のための、相手だよ、京子は、いいわね」
「なによ、どうして」
「だって、好きあってるんやろ、誠二と」
「まあ、そうかも知れん、誠二も、好いてくれてるんかなぁ」
京子には、誠二から、好きだと言われているから、好かれていると思っています。でも、どうしてか、茂子には、本当の気持ちを伝えらえれないのです。ランチの皿がテーブルに載せられ、フォークとナイフで、エビフライやハンバーグやハムを食べるのです。

_20190305_145126.JPG

愛の物語-41-

-41-
 茂子は、最近、専務からのお呼ばれが、少なくなったと感じています。土曜日は時間をかけて、たっぷり可愛がってもらえるのに、少し時間が短くなったのです。ひところは、平日にも呼ばれて、卯水旅館で短時間、からだを求められていたのが、ここ一か月は、呼ばれることがなかったのです。
<どうしたんやろ、専務さん、わたし、棄てられるんやろか、まあ、いいけど、お金がぁ>
19歳になる茂子には、世間の常識はまだわからないところもありますが、男との関係になると、もう大人です。からだも大人だし、性の生活も大人です。茂子は、夜の時間だけど、卯水旅館のウメさんを訪ねます。なにかと親切に、扱ってもらえるので、実の祖母のようにも感じる茂子です。
「うん、どうしたん、茂子ちゃん、今夜は、ひとり、なんやね」
「そうなんよ、わたし、なんかしら、淋しいの、淋しい気持ちなんよ」
「どうして、失恋したの、どうしたのよ」
卯水旅館の茶の間で、茂子は女将のウメに心の内を打ち明けます。専務の村田啓介のことは、強い気持ちで恋しているのではありません。といっても、いい男子がいるわけでもなくて、親しかった京子が近くにいなくなって、それも淋しさの原因のひとつです。
「そうそう、男が欲しい、そんな気持ちなん、違うの、茂子ちゃん」
「そんなことあらへんけど、なにかしら、淋しい、わたし」
「きっと、男が欲しいんや、男がいたら、淋しさなくなるん違うか」
「そうかも、しれへん、わたし、専務さんと、別れたら、お金、もらえへん」
「お金、欲しいんか、茂子ちゃん、ほんなら、いい男、紹介してあげよか」
「まあ、それでもええけど、お金もらえるんやったら」
ウメは茂子が啓介から毎月いくらもらっているかを知っているから、それに見合うお金を都合してやるのです。茂子に、男客を紹介するというのです。
「織子の仕事も辞めて、おばちゃんのとこに、仕事しにおいで」
「仕事しに、って、どんなお仕事なの」
「お客さんの接待よ、茂子ちゃんさえ、よかったら、来たらいいよ」
「泉織物辞めたら、寮、出んならんし、住むとこ、どないしょ」
「心配しなくていいのよ、近くに気楽は部屋があるから、そこ、借りてあげる」
「そうなの、わたし、織子より、お客さん相手のほうが、向いてるかもしれない」
茂子は、卯水旅館の中居として、働くことに決めます。中居として働くというのは名目で、女子を求める男子との仲介を女将のウメがする、というのです。

_20190308_143448.JPG

愛の物語-40-

-40-
<茂子>
 茂子は、京子が会社を辞め、夜間の高校へ通うことになって、渚アパートから出ていったので、気が抜けたように日々を過ごしています。結局、茂子は、泉織物の織子を辞めるまでには至らず、まだ続けています。京子以外に親しい友達もいないから、春の気配になっても気持ちが浮かないのです。仕事は、朝が早くて、八時から織機が動きだします。寮になっている渚アパートからは工場まで、徒歩で一分ほどだから、起きて着の身着のままでも、とはいっても寝間着は着替えて洋服にしますが、顔を洗ったり、朝ごはんを食べたりは、十時の休憩時間でもよろしい。仕事は織機相手に、付き添っているだけで、他の女子も同じようなことをしているから、着の身着のままでも恥ずかしくはありません。
「でもね、わたし、お昼、散歩するんだから、お化粧しなくちゃ、そうでしょ」
休憩時間には、20名ほどいる織子の半分が畳の間で、それぞれに30分休むのです。午後0時からのお昼休憩は1時間、午後3時から30分の休憩です。朝七時半から休憩入れて10時間、午後五時半までの拘束です。
「茂ちゃんは、いいわねぇ」
二十歳を越えた光子という名の先輩女子が、手鏡を持って口紅を塗る茂子の横から、声をかけてきます。
「いい男がいるんでしょ、知ってるのよ、おこずかい、もらってるんでしょ」
「ええっ、光子さん、そんなんちゃいます、ちゃいますよぉ」
会社の専務が工場の方へ顔を出すことは、ほとんどなくて、顔を合わすのは、お給料日に事務所へ行ってお金が入った封筒をもらうときです。専務の村田啓介が、手渡しする経理の女子の隣で、ねぎらいの言葉をかけられます。
「茂ちゃんは、専務さんに、囲われてるんでしょ」
茂子は、そう指摘されて、それが事実だから、ドキッとしてしまいます。
「でもね、茂ちゃんだけ、ちゃうよ、ほかにも、いるみたいよ」
光子が言うのには、昨年の春に採用した女子、中学を出てきて16歳の女子。目鼻立ちが揃った綺麗な女子が、専務啓介のお気に入りになって、最近できた五番町のラブホテルへ、夜に、連れていかれている、というのです。その女子の名前を、光子は明かさないのですが、どこからか情報を得ているのです。

_20190305_144915.JPG